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化学機械

サイクロン設計に慎重さが必要な理由|再利用可能な回収を実現するために

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サイクロン粉体回収 化学機械
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 サイクロンは粉体と気体が混じった系から粉体を取り出すときに使う装置として、有名です。取り出した粉体は再利用や廃棄を考えますが、直近の粉体工程ではなくその1つ前の工程に戻すことになるでしょう。できるなら直接再利用したいですが、そのためには結構慎重に考える必要があります。

 本記事では、そんなサイクロンのライン設計で考えるべきことをまとめました。

サイクロン分割

 最初は王道的なパターンを見てみましょう。

サイクロン分割

 このフローは、粉体の入った容器(タンクとかホッパー)から気体と粉体とが漏れてきて、その粉体を回収するためにサイクロンを設置した例です。

 粉体はサイクロンで分離され下部から排出され、気体は上部から排出されます。ブロアーのような排風装置がサイクロンの上部の下流側に設置されています。

 サイクロン下部にバルブを設置しておき、定期的に粉体を排出するという流れが実現できます。ところが、ここには問題点が。

・仮にバルブが無い場合は気体が逆流してサイクロン側に流れ込みます
・バルブを付けても開け忘れていると、サイクロン内に粉体が溜まり、最終的には気体と共に上部から排出される(分離されない)
・回収をする場合は、粉体工程の1つ手前に投入するなど処理が必要(異物混入など製品に影響を出さないため)

サイクロン直結

 サイクロン分離型の問題に、回収しにくいことがあります。異物混入を考えると、分離した粉体を何とかそのまま再利用できないか考えたくなります。これがサイクロン直結型の狙いの1つ。

サイクロン直結

 この方法だと、サイクロンで分離した粉体がそのまま元の容器に戻るので、効率的に回収できるように見えます。ただし、この方法にも問題点が。

・サイクロン下部では気体の逆流が避けられない(分割型でも同じ問題)
・ブロアーなど排風装置をサイクロン1次側に付けると、設備の摩耗粉が異物混入の原因となる
・サイクロンを容器の上部に設置する必要があり、設置高さが必要

 サイクロンを大きくすれば粉体を溜め込むことは可能となりますが、高さが大きくなります。運転開始時はサイクロン内に粉体が貯まっておらずに、気体が逆流してきます。これがサイクロンの作動を悪くさせます。

 ハマればすごく効率的な運転が可能ですが、粉体物性や運転条件などを考慮する必要があり、新規導入をするにはかなり慎重に扱わないといけません。

自動化のハードル

これらの問題を解決する1つに、自動化で何とかしてしまおうということが考えられます。

・サイクロン底に自動弁を設置
・サイクロン下部に粉面計を設置
・サイクロン下部に逆流防止用のエアーブローや窒素ブローを配管を設置

サイクロンに一定量の粉体が貯まれば、自動的に排出する方法です。自動弁と粉面計は必須ではなく、タイマーなどで定期的に排出するという方法でも良いでしょう。この考え方はバグフィルターと同じです。

自動化をするにはほぼ必ず自動弁が必要となり、そこでの詰まりが起きたり摩耗粉による異物混入が考えられます。異物を考えずに直接回収したいのに異物ができてしまうという、本末転倒の結果となりえます。

線速と圧力損失

 サイクロンは一定以上の速度(線速)で運転して、粉体と気体を分離する方法です。速度が必要となる以上は、圧力損失の問題が起きます。

 ここで大事になるのは排風装置。ブロアーやファン程度の弱い装置だと、線速が出せずにサイクロンとして機能しない可能性があります。強いすぎると電力消費が大きくなります。

 ニーズにもよりますが、粉体回収をしたいからサイクロンを付けると安易に判断して設計すると、痛い目に会う可能性があります。もっと簡便な慣性衝突装置などでも、一定の効果は期待できますので、併せて検討すると良いかもしれませんね。

参考

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最後に

サイクロンを単なる粉体回収装置ではなく、「回収して再利用する」ためには多数の条件をクリアしなければなりません。
異物混入・逆流・設置高さ・圧損といった設計要素は、工程全体への影響が大きく、安易な判断がトラブルを招きます。

✔ 設計時には以下のポイントを確認しましょう:

  • 回収後の粉体をどの工程に戻すか?
  • 逆流防止対策は機能するか?
  • 設備の高さ制約や圧損バランスは取れているか?
  • 異物混入の可能性を最小化できるか?

粉体工程におけるサイクロンの導入は、コストだけでなく品質面にも大きく影響します。最適な設計にするためには、現場の運転条件・物性・プロセス全体を踏まえた検討が不可欠です。

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