化学プラントでは設備のトラブルは必ず起きます。
そのたびに生産技術である保全課は呼び出しを受けます。
もしもし?良いから早く直して
こういう雑な感じの依頼を製造課から受けるでしょう。
それで何とか直したと思って一息つこうとしたら、次はこのセリフが飛んできます。
で、原因解析は?上に報告しないといけないから、よろしく
直すことでも神経を使いますが、解析はもっと悩みます。
これが嫌で保全をしたくないという人は少なからずいるでしょう。
でも、できないのには理由があります。あなたのせいではありません。
分解できない
原因解析をしようとしたら、最終的には分解しないと分かりません。
腐食などの問題なら材料を切断して、研究室で解析しないと分かりません。
これを分解せずに判断したり、実物が入った状態で原因解析を求められたりします。
それではどうあがいても分かりません。
トラブル経験が少ない
設備洗浄をして分解したり装置内に入って、目視で確認したとしましょう。
これだけで、原因が何なのかはっきりと答えられるケースは多くはありません。
- 腐食であるのか摩耗であるのかすら、一概に言えるものでない
- 腐食なら隙間腐食なのか応力腐食割れなのか、目視だけで確認できる人は専門家だけ
これは、トラブルの経験が少なくなった現在ならではの問題です。
保全課と言えども世代交代はされ、過去の知見は揃ってはいないか整理されておらず使えない、トラブルは実はあまり多くない。
この状態で育った保全が、トラブル解析をすること自体が難しいです。
メーカーも専門家ばかりではないので、メーカーに依頼しても時間が掛かります。
その間に、上層部からは「早く解析を・・・」と詰められるわけですね。
使用条件が分からない
使用条件が分からないから判定できないというケースは、少なからずあります。
連続プラントで単一使用条件なら、比較的考えやすいでしょう。
バッチプラントでは複数の条件で運転するし、毎バッチ起動停止が発生するので、何が故障原因なのか特定するのが難しいです。
細かく条件を調べるだけでも、実は結構時間が掛かります。
例えば、シールレスポンプの空運転で壊れたとしましょう。
典型的な空運転で起こった故障でも、いつどうやって壊れたか?を特定するのは結構難しいです。
- スラリーが多めにいて詰まったのか
- バルブを絞り過ぎたのか
- 温度が高くてキャビテーションが起きたり、低くて固化したり
- 部品が寿命で壊れたり
- 製品とは違う異物が入ってきて壊れたり
いろいろ考えられます。
答えられなくても良しとする風潮を
保全が原因解析をするというのは、実際にはかなり難しくなっているでしょう。
この事実をしっかりと認識し、保全に責任を押し付け過ぎないような風潮が大事になります。
- 長期運転していたら壊れて当たり前。原因を調べて対策を打つくらいなら予備を持つ
- 使い始めたばかりで壊れたのなら、まずは運転条件を疑う
- 詳細検討をしない限りは全て推定原因であり、できる限り調べたという納得感で妥協する
時間を掛けても、成果に結びつかないならしない方が良いです。(この場合なら、解析して再発防止が期待できるなら、解析の価値があるということですね)
みなさんの職場では、原因解析を細かく聞かれるでしょうか・・・。
参考
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最後に
化学プラントの設備は故障原因解析が難しいです。
分解しにくいし、トラブル経験を持っている人が少なくなっているし、使用条件も分かりにくかったりします。
ここに時間を掛けても、故障頻度削減などの効果が得られないなら、割り切ってTBM的に予備を持って交換していく方が健全です。
検討に欠ける時間も立派なコスト。トータルコストを考えましょう、
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