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化学プラントのプロジェクト後も残すべきエンジニアリング資料

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 化学プラントではプラント建設や設備の増改築などさまざまなプロジェクトがあります。大きくて古い工場なら毎年決まった仕事があり、そうではない工場なら設備更新の機会すら1年に数件という場合もあるでしょう。
 どちらにしても、化学プラントでのエンジニアリングというのは特殊な位置づけであり、そこに関わる記録は貴重な情報として残したいものです。プラント建設レベルなら多くの資料が必要で、資料の山と格闘するという話はよく言われています。しかし、いざ建設したらそのあとに使われる資料ばかりかというとそうでもなく、日常の増改築でも必要な資料であってもその資料が上手く活用されていないということはままあります。

 本記事では、化学プラントのエンジニアリング資料でプロジェクト後も本当に必要となる資料をピックアップしました。

絶対必要

 最初はエンジニアリング資料で後世にも絶対に必要となる資料から解説します。

P&ID

 P&IDはエンジニアリング資料の骨格と言っていいくらい中心的な資料です。この資料はエンジニアリングだけでなく運転でもふんだんに使用します。

 この資料が適正に作成され、適正に変更管理がされることは、会社の信用にもなります。エンジニアリング部という組織が製造部とは独立させるべきという理由は、ここに集約されていると言っても過言ではありません。

 P&IDは一応は記載ルールがありますが、会社やその工場で独自の表現を使っていたりします。エンジニアリングを担当している人は、P&IDのルールを決めて適正に作成されていることを重視します。そこに過剰な時間をかける人もいるでしょう。費用対効果は考えるべきですが、ある程度の時間をかけないと維持管理ができないことも確かです。

 これくらい重要なP&IDなので、その運用を疎かにしている工場は確実に苦労します。プラントエンジニアリング会社など一瞬の仕事で関わる側は、プロジェクトのサイトのP&IDがどれくらいの熱量を込めているかどうかを1つの判断基準としていると思います。

配置図

 配置図はP&IDと同じかそれ以上に大事です。P&IDが運転面で大事なら、配置図は工場の運営という広い視点で大事です。

 どこに何の設備が配置されているかという防災面の目的もありますが、どこに何のプラントがあり原料や廃棄物の施設がどこにあり、事務所がどこにあるかなど、工場見学や官庁申請など対外的な業務にも活用されます。

 配置図はP&IDほどの独自ルールはなく、一般的な図面の範疇で記載されます。

設備図面

 設備図面は設備の全容や仕様が分かる基礎資料です。エンジニアリングでの設備設計という基本業務の成果物の1つとなります(本当の成果は設備そのものですね)。

 設備図面は大抵は設備メーカーに記載してもらうので、その図面を適正に管理することが大事です。小さな工場では事務所の紙ファイルで置いていても良いかもしれませんが、そうでないならシステムに投入して変更管理の仕組みをしっかりする方が好ましいです。誰でも操作できる場所に置いておくと、誤って削除することもあります。

 設備図面はP&IDや配置図よりは重要度が落ちますが、ないと確実に困る資料です。エンジニアリングではこの辺りまでは「後々まで必要な超重要資料」という位置づけで仕事でも取り組んでいることでしょう。

あれば助かる

 エンジニアリング資料であれば後々助かるという資料を紹介します。プロジェクトなどで実際に行っている業務の多くはこのカテゴリに入ります。

見積査定

 見積査定はあればとても強力なツールになります。毎年多くの設備を購入する工場であればこれをデータベース化すると役に立ちます

 ・過去の実績からFSでの見積単価に反映させる
 ・個々の購入案件の査定や価格交渉時に使用する

 ところが見積査定の情報を集めるのは意外と大変です。個人持ちが可能だからです。P&IDや配置図もその傾向がありますが、CAD作成担当者など資格者を限定することで防げます。見積査定は単にPDFのデータで終わってしまうので、個人のパソコンに入っていたり、サーバーでも個人管理する場所に入ってしまうと整理ができなくなります。共通のExcelに入力させるとしても入力忘れもあります。

 この辺は専用の管理者を設けるなど、特別な仕組みを作らないと現実的には回らないでしょう。その費用対効果があるのかという話になって、あまりないが必要になった時に慌てて探せばいいだろうという考え方もあります。

設計書

 設計書は図面と同じような位置づけです。設備の仕様を決めるにあたった根拠を残す資料です。

 例えば新プロセス開発などでは多くのドキュメントを設計書という形で残し、各部門に引き継がれて工場の情報となります。実運転の情報は日報や月報という形で作られますが、データベースという形にはなっていないことが多いでしょう。すなわち膨大な情報の中から必要な情報を拾い上げるのが難しくなり使えないデータとなります。

 同じように設備の設計書も情報が多くて調べても意味がないことがあります。特にバッチプラントなど既設と同じ設備を更新するという際には、設計書そのものが不要です。その間に当初の設計情報が引き継がれないとしても、あまり問題にはなりません。
 長い時間たった設備が故障して更新するとしても単純更新で良いですし、それまでの間に生産品目や製造条件が変わったりして、設備の寿命を評価するのが難しかったりします。しっかり時間をかけて設計しても適当に設計しても、ある程度標準化されていたら大した差がないということです。

見積仕様書

 見積仕様書は設備や工事を購入する際に必要な資料です。これもあまり大きな問題にはなりません。設備を購入する場合は図面から必要事項を手動でピックアップすればいいですし、工事は個別の工事資料を作るからです。

 過去の仕様書は標準仕様書という形で統一化さえしていれば、個々の仕様書を未来永劫残す必要まではないというのが個人的な考えです。必要になるのは短い頻度で設備を更新するときくらいで、それは設計の失敗や運転の失敗という限定されたシチュエーションです。

機器リスト・弁栓類リスト

 機器リストや弁栓類リストは、あれば確かに有用です。そのプロジェクトでプラントに対して実際に変更した履歴を示すものだからです。

 この資料は工事資料として発行されることもあり、工事だけでなく保全上のリスト管理にも活用されます。それだけでなくて、多くのプロジェクトをしていたら、いつ何をしたのかを一目で見るための有用な資料ともなります。

 どの用途でも使うときは一瞬で長期的に使用するわけではないので、あった方がいいけどなくても大して困らないというものになります。

 プラント建設で一斉に設備を建設した場合の機器リストは使えそうな気もしますが、P&IDの目次をしっかりするだけでも目的はある程度は達成できます。
 どちらかというと弁栓類リストの方がはるかに大事です。他に考えが残る資料がなかったり、他プラントでも活用できる可能性があるからです。

予算進捗管理

 予算進捗管理はプロジェクト中は定期報告資料として活用します。これが終わった瞬間に使われなくなるのですが、本来は宝の山の資料です。

 プロジェクトのどの段階でどれだけの予算を使うかの資料が一定規模集まると、その会社のプロジェクトでのお金の動かし方が見えてきます。これは設備投資の予算化や予算進捗管理など、会社の運営にも影響を与える資料となりえます。

 この資料がなくてもある程度は「設計者の体感値」として表現できますが、個人の能力や感性に寄った結果となると会社としては好ましくないでしょう。
 定量化するための資料として過去の予算進捗管理が使えるのは確かですが、なければ予算投資が制限されるだけなので直接的に誰かの不利益になりにくいです。長期的にはエンジニアそのものへのしっぺ返しとなりますが。

ほぼ使わない

 エンジニアリングでは定期的に使用する資料であっても、プロジェクトが終わると不要というものももちろんあります。

工程表

 工程表はプロジェクト全体のスケジュールや工事など特定のスケジュールを体系的に整理するものです。進捗中であれば工程表ベースで管理していきますが、終われば当然不要。

 FSなどで長期計画を立てるときに、いつ何をするかというタスク整理としては工程表を使うことはありえますが、実際には複数のエンジニアリング経験で身に染みてしまって過去の工程表を参照しなくても計画は立てれてしまいます。

図面の変更履歴

 図面は特に変更履歴が多くなってしまいます。1回や2回ではなく部品ず含めて10回以上の履歴の残る設備図面も珍しくはありません。

 これはデータとしては大事そうに見えますが、実際には全く使いません。設備を据え付けて運転して、1年も経てば誰も興味を持たなくなるでしょう。だからこそ、完成図書として整理さえしてしまえば、処分してもいい情報です。

最後に

化学プラントのエンジニアリングプロジェクトでは、非常に多くの資料が作成されます。エンジニアリングの成果は設備そのものですが、その設備を将来にわたって正しく理解するための情報もまた、プラントに残された重要な資産です。

したがって、プロジェクトを完了させるだけでなく、「完成後に何を残すのか」まで含めてエンジニアリングだと考えることが、長期的なプラント運営には重要なのではないでしょうか。

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 この記事の内容を、あなたの職場・キャリアに合わせて整理したい方に技術・キャリア相談を行っています。海外プラント、製造管理、組織の病理、キャリア停滞など、あなたの状況に合わせて具体的にアドバイスします
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【著者:ねおにーーと】

化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら

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