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生産技術と調達はなぜ対立するのか?|化学プラントの納期遅延から考える購買の問題

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 本日、Xで購買に関するポストが話題になりました。

 生産技術と調達はそれぞれの立場から思うことがあって、お互いに批判したり協力関係にない趣旨のポストを見かけたりしますが、本当は同じ社内だから協力すべきことだと思っています。

 私も生産技術の仕事を15年していて、調達に関する想いはどんどん変わっていっています。

化学プラント生産技術者から見た資材調達との20年―なぜ生産技術と調達は噛み合わなくなるのか―
化学プラントで20年以上、生産技術として資材調達と関わってきた経験をもとに、納期・価格・進捗管理・指名購買・仕様統一など、生産技術と調達が噛み合わなくなる理由を現場目線で解説します。

そのうえで、私は「購買の方が問題」と考えています。「購買だけが問題」というわけではありません。

そう考えている背景を解説したいと思います。会社の規模や調達する資材によって事情が変わる部分があるので、必ずしもすべてが当てはまるかどうかは分かりませんが、少しでも状況を良くするための方法として受け取ってもらえればと思います。

生産技術側でできること

 今回のポストだけを見ると購買の方が問題というのが、私の意見です。そのうえで、生産技術としてはどういうことを考えているか、私が担当していた時のことをまとめました。

 繰り返しますが、すべてが各会社に当てはまるわけではありません。当時私が全てを実施していたわけでなく、問題が起きるたびに試行錯誤しながら方法を作っていったというイメージです。

購買依頼を早めにする

 購買依頼を早めにするというのは生産技術側ができる最初のステップです。最近ではウクライナ関係で納期遅延が起きた時に、社内や部内では「購買依頼を早めにする」というのが上層部からの指示でも出ていました。

 これだけの指示しか出ていませんが、この裏には以下のニュアンスが含まれます。

プロセスや製造が条件を決定していないと納期に間に合わずに生産が止まる可能性もあるから、生産技術は条件提示を待つだけでなく上流にプレッシャーを与えてもいい。

生産技術の立場としては製造に逆らいにくくなかなか言えないかもしれませんが、「入手できないものはできない」と突っぱねてしまうことになります。

 今回のポストではLT2週間に対して、1.5か月前に発注しているという点で、非常に感度が高い仕事だと思います。納期遅延がちという情報も入手しています。生産技術として否定される要素はここにはありません。

 というのも、先のような指示が工場内や部内で出回っていても早めに発注しない生産技術が身近に居たので、そういうコンセンサスがない環境でも自主的に警戒していたのだと推測しています。

納期にバッファを設ける

 購買依頼と同じように納期にもバッファを設けます。

 今回のポストは期間が短すぎて適用は難しいかもしれません(1.5か月前の発注時に納期を1週間前に設定するなどはできたかもしれませんが・・・)。

 バッチプラントの場合では、納期1年~1.5年などの長納期品を結構扱うので、発注は早めにしつつ、納期側でも1か月くらいのバッファを設けたりします。早めに工場に入っていても置き場所の問題だけで、工事には影響が出ない側だからですね。

 これを常態化させてしまうと、調達もサプライヤーも「Nさんの案件は余裕を持ってくれているから甘えても大丈夫だろう」と思われてしまいそうで不安でした。結果、そういうことはさすがになかったです。

調達に特別案件だと伝える

 それがないと本当に工場が止まり、期限も迫っていたり怪しかったりする場合、特別な案件として調達に伝えます

 私のところはSAP Aribaを使っているので、依頼側と発注側でコメントを残せるようにしているのでリスクは低くなります。Aribaでコメントを記入しても読んでなかったということもありえます。そこに備えて、メールや対面などでフォローするようにします。他のシステムなどコメントを残せない場合もあるので、緊急感を別の方法で伝えます。

 私はこういう依頼は年に数件あるかないかでしたし、調達も協力的に対応してくれました。

 生産技術側の依頼点数が多かったり調達の取扱発注点数が多かったりするなど、緊急の案件ばかりで特別対応できないという場合、会社としての結構な問題だと思います。それでも、個別に依頼したものは重要なものとして取り扱ってほしいですが。

定期的に調達に進捗確認をする

 納期や対応が怪しいというサプライヤーで、工場が止まるかもしれないくらいの緊急感があるなら、生産技術から定期的に調達に確認します。今回くらいの例なら1週間に1回くらいは

「見積状況はどうですか?」

と聞いても良かったかもしれません(結果論かもしれませんが)。

 依頼を出すまでは生産技術も慌てますが、依頼を立ててしまって調達のフェーズになると調達の管理をしようとはなかなか考えません。
 ・調達が希望納期通りに調整して当たり前
 ・見積進捗が遅れければ、調達から生産技術に連絡してしかるべき
 (少なくともサプライヤーから見積が出る前に)

 こういう対応をしていてもいいのですが、調達を信じてもいいことがあまりないと悟ると重要な案件ほど生産技術から働きかけてもいいと思います。面倒かもしれませんが、放置した結果はもっと面倒なことになっているはずです。

先行手配をする

 調達の手続きの問題を気にするなら、先行手配という方法があります。これは奥の手のようなもので、私は基本的に使いません。価格交渉ができないからです。

 先行手配という事態に陥らないように調整するのが、生産技術の仕事と思います。予算着工が遅れてどうしようもないという事態にそもそもさせない、という意味です。

代替設備の調達でカバーできないか考える

 調達面での生産技術ができることはあまりないですが、代替設備の調達でカバーできないか考えることはあります。

 コストも使用も満足する代替設備を探せることばかりではないので、実現可能性は高くはありません。化学プラントなら特定メーカーのボール弁ではなくて別メーカーのボール弁を考えるとかでしょうか(これでも製造現場からは抵抗が大きい)。

 自プラントだけでなくて他プラントで調達中のものがないかを調べることも稀にします。調達にヒアリングして、そのプラント担当者に交渉する形です。タイミングに寄りますので、これが成功したことは15年に数件しかありません。

 サプライヤーの複数ソース化はとても大事なことで、過去実績があるからお気に入りの1社だけと決めてしまうとこういう時に大変です。化学プラントのボール弁がいい例です。

代替設備の流用でカバーできないか考える

 設備調達が難しくて、すでに他プラントで使っている場合にはその設備を使うという点は考えられます。

 他プラントが停止しているなど特別な事情によります。バッチプラントの場合は生産計画だけでなく、特定の設備を使わない生産品目もあるので、融通してもらうことは多々あります。これを実現するためには幅広いコミュニケーションと信頼関係つくりが大事です(調達にはこの辺りが見えてなくて、生産技術と敵対するという例の方が多いのが実体験ですが)。

生産計画の見直し

 設備は調達できず流用もできないとなった時には、生産計画の見直しに入ります。バッチプラントの場合は品目の切り替えやスライドである程度カバーできたりします。

 生産計画への影響は生産技術としても製造としても汚点に見えるかもしれませんが、会社によると思います。意外と何ともなくて、問題を最小限の被害で抑えようとしたという評価になったのかもしれません。

購買側でできること(やってほしいこと)

 生産技術側でできることがいっぱいあって、それでも今回なら購買の方が悪いというのは、コミュニケーションの取り方による部分が多いです。これ以外にも、購買でもできることはあると思います。

納期(と価格)の傾向情報の開示

 納期や価格の情報を定期的に生産技術に開示することは、購買がすべきことです。今回は実施していたかもしれませんが、生産技術側が自主的に気づいているように受け止めができます。

 サプライヤーに対する印象が調達と生産技術で違う部分がありますが、納期や価格の情報は調達の方が持っているので、生産技術の手間を減らすような仕組みとして実施してほしいです。調達が思っているカテゴリ区分が生産技術とは違って、情報が分かりにくいなど問題があったとしても、です。

 サプライヤーは調達にはすぐに対応することが多いです。生産技術には技術的な事項なので後回しにするのは特に日本のサプライヤーに多いです。だから、調達から見たらこのサプライヤーはそうでもないけども、生産技術から見ると怪しいという例はあります。そういう例外はともかく、購買依頼を早めに実施するという気づきのためにも、調達からの情報発信は大事だと思います。

 私の周りでは一時期、「工場の問題は工場で解決してほしい(調達は関係ない)」というスタンスで、納期遅延や予算超過があってもすべて工場の責任と押し付ける調達が多かったです。

見積期限の情報の開示

 購買依頼を立てて見積が出てくるまでのステップは生産技術には見えません。例えば慣例として見積期限を見積依頼から2週間後と設定していたとして、サプライヤーが1か月後に返事をしてきたという例は多いと思います。複数社に見積を出していて全社からの結果が出そろうまで査定できないというルールで、査定が遅れ納期も遅れるという話すらあるくらいです。

 見積期限を生産技術側にも連絡する仕組みがあれば、重要な案件だと生産技術も注意することが可能です(調達に一律カバーしてほしいというのが生産技術の論理ですが)。

 Aribaでは見積期限は記入できても、アラームのような形にはできないはずなので、担当者が見積期限を見に行くというステップが必要なはずです(自信はありません)。であれば、重要な案件ほど調達に個別に聞くというアナログだが確実な方法を取る方が良いかもしれません。

他類似案件の情報の提示

 代替設備の調達と同じ意味ですが、現在進行中の案件や過去実績で購入のある類似設備の情報を生産技術に伝えます。

 納期が間に合わないという緊急の状況なので、生産技術だけでカバーするというのはあまりにも無責任で、調達でも知っていて使えそうな情報を生産技術に伝えることが必要だと思います。Xのポストでは限界納期や分割納入などの方法案も提示されていますが、それと同じような趣旨です。

今回の状況でできること

 納期遅延が分かった後で、できることはそう多くはありません。調達からサプライヤーに対してあれこれお願いすることになりますが、そこに期待するのは現実的ではありません。無理な注文をしてくる会社だとサプライヤーから敬遠されるリスクもあります。新卒2年目購買の回答はここだけを意識した答え方になっていると思います。

 修理案件ならリスク覚悟で生産する、新規案件なら生産計画をずらす、というような否定的な解決策になるでしょう。化学プラントのような危険な工場で、リスク覚悟の運転というのはとても怖いですが、こういう発想になります。原状に復帰するまで、生産技術が工場のフォローをするなど別工数が発生します(この辺りは調達には見えてないです)。

最後に

 生産技術と調達の関係は、製造業のどこでもある程度の問題を抱えています。今回のポストはその一部分の切り取りですが、背景には調達システムの問題に到達すると思います。

 どちらかが壁を作った瞬間に全体最適ではない局所最適になってしまい、一時期は問題が解決したかに見えても、その後に問題が起きて誰も対応しないという結果になりえます。そうならないようにするためにも、「腹を割った話し合い」ができる風土が大事だと思います。同じ社内ですからね。

 最後にななさん(@Nana0612z)のポストが考えるきっかけになりました。ありがとうございました。

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 この記事の内容を、あなたの職場・キャリアに合わせて整理したい方に技術・キャリア相談を行っています。海外プラント、製造管理、組織の病理、キャリア停滞など、あなたの状況に合わせて具体的にアドバイスします
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【著者:ねおにーーと】

化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら

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