昨今、原油供給停止が話題になっています。化学プラントでも石油化学系で生産が止まったり問題になり始めています。今後、影響は拡大していくでしょう。石油化学以外の化学プラントでも影響はすでに出ていますが、世間では石油化学だけが話題になりやすいです。あとは半導体。
本記事では、石油化学ではないバッチ系の化学プラントで、原油が止まって起こっていることを説明します。
原料が届かない
原油が止まると、化学プラント目線では原料が届かなくなります。石油化学プラントでナフサから各種原料を取り出して製品としていきますが、この製品を石油化学以外のプラントでは原料として使用します。
溶媒
まずは溶媒の供給停止を考えます。溶媒が止まると石油化学以外の化学プラントでも即運転停止となります。
化学プロセスでは反応物質よりも圧倒的に多い量の溶媒を常時使用しています。トルエンなどが典型例です。トルエンもナフサから得られる物質なので、原油が止まったらトルエンも止まります。
溶媒は反応には直接寄与しないものの、間接的に寄与する可能性があります。トルエンなら問題がなくてもキシレンなら問題がある、という例もいっぱいあります。
では、その製品の溶媒が何だったらいいのかをしっかり整理している会社はあまり多くはありません。開発段階でトルエンが一番成績が良かったからトルエンを使うことに決め、品質を作り上げてしまってから長年経っている製品なら、急にキシレンに変えるとしてもお客さんへの説明が極めて難しくなります。溶媒を変えることによる、製品への影響を短期的に評価できません。
溶媒が入手できなくなって、製造ができなくなるまでの時間は、タンクの容量で決まります。タンクが大きいほど長い時間作れる計算ですが、タンクの容量はある程度制限があるので生産停止の影響は考えることになるでしょう。
反応物質
溶媒以外に反応に使う物質も供給が止まります。これは購入先で製品が作れなくなるからです。溶媒が使えなくなると物が作れなくなるので、使用者の立場では原料が手に入らなくなります。
溶媒の停止に比べると、反応物質の供給停止は後で出てきます。購入者でも溶媒タンクを持っていて製造できたり在庫を持っていたりするからです。それでも輸送コストが上がるなどの影響はすぐに出てきます。
購入価格が上がる
原料の供給がストップというほどではないですが、購入価格が上がることは容易です。原料そのものが貴重になるからです。ガソリン代も上がりますよね。あれと同じで輸送コストの上昇はすぐに影響が出てきます。
輸送コスト上昇に合わせて、加工コストも上乗せされやすいです。原料供給の停止が解除されるまで購入を抑えようとする動きもすぐに出てきます。
生産はすぐ止める
バッチプラントの場合、原油が停止となると生産停止をすぐに考えます。これは運転停止が連続プラントに比べて、とても楽だからです。
・いつ原料が入ってくるか分からないなら、さっと生産を止めます。
・入る見込みがあったり在庫があれば、生産は継続。
・原料が入るとしてもコストアップが激しいなら停止。
この辺の割り切りがしやすいです。
連続プラントだと原料が入ってくる「見込み」で生産を続けざるを得ない場合がありますが、停止のロスや影響度を覚悟していないとできません。特に廃棄に関する手順を踏むのが面倒になります。
参考
最後に
原油供給停止の影響は、石油化学プラントだけにとどまりません。非石油化学プラントにおいても、以下のような現実的な影響が発生します。
・溶媒不足による即時停止
・原料供給の遅延と不足
・価格上昇による採算悪化
・バッチプラント特有の迅速な停止判断
特に溶媒依存の高いプロセスでは、影響は極めて直接的です。原油問題は「遠い話」ではなく、サプライチェーン全体に波及するリスクであることを理解しておくことが重要です。
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【著者:ねおにーーと】
化学プラントで20年以上、設計→製造→保全→企画まで一気通貫で経験したユーザー側エンジニア。 バッチプラントの設備・運転・トラブル対応を中心に、現場で本当に役立つ知識を発信しています。 → 詳しいプロフィールはこちら
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