フッ素樹脂ライニングは耐食性の高さなど突き抜けた特徴があるために、化学プラントで使うことは少なからずあります。でも、ある意味で平均的な特徴が求められる化学プラントでは、デメリットの大きさのために採用されないことも多いです。
この記事では、化学プラントでフッ素樹脂ライニング設備を選定する時の、実際の採用理由となるものをいくつか考えました。むしろ採用されるのは、“ほかの選択肢ではどうにもならない”という 消極的な理由 が揃ったときです。
この記事は、フッ素樹脂ライニング設備シリーズの一部です。
フッ素樹脂ライニング設備の概念設計
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腐食性がとても高く、使用期間が短い
フッ素樹脂ライニングは耐食性が高いことがメリットなので、取り扱う内容物の腐食性がとても高い場合には選ばれます。グラスライニング設備で何とか使おうとするのが基本ですが、それだとどうしようもなく、高級金属は高すぎるので避けたいという場合に候補に上がります。
コスト目線で初期コストが低いからフッ素樹脂ライニング設備は目立ちませんが、ランニングコストは決して安くありません。老朽化したプラントではここが直接問題となります。
フッ素樹脂ライニング設備が選ばれる場合には、「腐食性の高い液体」かつ「非常に長いこと生産するわけではない」という条件が付いているともいえるでしょう。フッ素樹脂ライニング設備が選びにくいわけです。
温度・圧力変化が少ない
フッ素樹脂ライニング設備は、金属にフッ素をライニングさせている以上、圧力や温度変化は慎重にした方が良いです。多少の変化範囲であれば使用条件範囲内だから問題ないとは言いきれません。実際の使用条件での変化範囲で、劣化せずに使えるかどうかは、やってみないと分からないからです。
連続プラントなど条件がほぼ一定の場合はあまり気にしませんが、バッチの場合はほぼ毎日変動があります。使用実績を積みながらどこまで使えるか確認していく作業が必要になりますが、その手間をかけるくらいならグラスライニング設備の方が安心という意見は当然かも知れません。
静電気着火や粉塵爆発のリスクが少ない
フッ素樹脂ライニング設備は静電気や粉塵爆発がやはり怖いです。グラスライニング設備でも状況は近いのですが、程度問題としてグラスライニング設備の方が有利です。
各種安全対策を講じて何とか使用できる条件を見出す化学プラントでは、この差が意外と大きくフッ素樹脂ライニング設備だとやはり使えないという判断が出るケースもあります。有機溶媒を使う以上はリスクがあがるので、そうではない限定されたプラントで使うかも知れません(酸やアルカリだけを使うプラントはそう多くはないでしょう)。
参考
最後に
フッ素樹脂ライニング設備は、突出した耐食性を持ちながら、
決して“万能で積極的に選びたい素材”ではありません。
実務ではむしろ、以下のような 「消極的な理由」 が揃ったときに採用されます。
- 腐食性があまりに高く、他の素材では対応できない
- 温度・圧力変動が少ない運転条件である
- 静電気・爆発リスクが低い限定的な環境である
こうした条件が重なった結果、
「他に方法がないからフッ素樹脂ライニングを使う」
という判断が多いのが実情です。
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