化学プラントなどで製品が粉体である場合に、粒径を揃えるために振動ふるい(篩)を用いることがあります。当たり前のように使ってしまいがちですが、機械の構造を考えずに使うと事故に繋がる可能性があります。
本記事では、振動ふるいについて設計上のケアすべきポイントを解説します。
振動ふるいの役目
振動ふるいは様々な会社が製造していますが、外観はほぼ同じ以下の形をしています。

動いていない状態のこの設備を一見すると、何の目的か分からないかもしれません。主張が激しくなく、その場にそっと居るだけの存在に見えてしまいます。
この機械では、例えば製品の粒径を一定に揃えるという重要な役目を担います。例えば、以下のように、粒径分布が広い粉に対して振動ふるいを使って細かい粉と粗い粉に分ける作業を行います。

ここで細かい粉が製品など目的物となって、粗い粉は回収して再利用に回したりします。
振動ふるいの構造
振動ふるいの構造をもう少し細かく見てみましょう。
網でふるいわけ
振動ふるいは網を使って篩分けをします。フィルターなどと同じで物理的に物質を除去する方式です。古典的・基礎的な方法は応用が広いですね。
粉を上部から重力落下させてます。上部の網と下部の網は穴などサイズが異なります。網の穴を通り抜ける細かい粉が下部に排出され、網の穴を越えれない粗い穴が上部に残ります。網は動力によって振動させており、上部と下部に分けられた粉は自動的に排出口から排出されます。

網の間に「叩き玉」を設置する場合があります。これは解砕の機能を若干でも振動ふるいに持たせていることになります。網が動力で動くのだから、その力を上手く使えば解砕もできるという考えですね。粉体の性状によっては、叩き玉を付けなくて単に仕分けをするという場合もあります。この方が安心です。
振動機構
振動ふるいはその名前通り、ふるいを振動させます。振動する機構が必要ですね。電気という動力を使います。

モーターをふるい機の下部に設置します。この力を下部のふるい室にそのまま伝えます(絵では省略していますが、粉が外周に排出されるような形状をしています。合わせて上部のふるい室も動くようになっています。これはスプリングの力を使っています。これで下部・上部のふるい室を動かして粉体を移動させていきます。
化学プラントには珍しく動力が作動すると、機械全体が動いていることが見える機械です。
安全上の注意
振動ふるいは網を機械で動かすだけの単純な機械です。だからこそ、安全上の注意が必要となります。
周囲に近寄らない
振動ふるいは機械全体を動かす設備であるため、人が近寄ると危険です。少なくとも接触しないようにするために、周りに表示をしたりロープを張ったり簡単な柵を付けることが好ましいです。
それなりの音と振動がするので近寄る人は居ないと言いたいところですが、それで済めば世間で多くの被害が出ることはないはずなので、対策は取りましょう。
振動ふるいから出た粉体を回収するために、出口にドラム缶などを置く場合は注意が必要です。徹底するなら振動ふるいとドラム缶の設置階を変えるなど、人と設備を分離させます。
粉塵爆発
振動ふるいでは粉塵爆発はケアしておきましょう。振動ふるいとドラム缶を同じ階に設置する場合、排出口からドラム缶までスリーブのようなもので接続することが考えられます。
振動ふるいはずっと動き続け、ドラム缶に一定量溜まったらスリーブを人が取外し、新しいドラム缶をセットしてスリーブをドラム缶に挿入する。この時間はわずかなもので、その間はスリーブ内に振動ふるいから粉が排出されるがスリーブが満杯になることはない。こういう運転をしがちです。
ふるい室はガスケットなどで周りの設備と固定するので浮き導体になります。スリーブは電気を通しません。このため下の赤い部分が電気を通さない場所となります。

この状態で運転していると、内部で静電気が起きて粉塵爆発が起きる可能性があります。最小着火エネルギーなど粉塵爆発性を正しく評価し、浮き導体とならないようにボンディングを取ることが必要です。
参考
最後に
振動ふるいは、粉体の粒径を整えるうえで欠かせない装置です。
しかし、「単純な機械」として軽視すると、粉塵爆発や人身事故といったリスクを招くことになります。
- 網構造・振動機構を正しく理解する
- 運転中は人と設備の距離を確保する
- 静電気対策(ボンディング・接地)を徹底する
これらを意識することで、安全かつ安定した粉体処理が可能になります。
振動篩ふるいは「ただのふるい」ではなく、安全設計と運転管理が求められる装置なのです。
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