フランジカバーは言葉通り配管フランジのカバーです。
カバーなので、付ける方が防御力が上がり、安心感も上がると思い込んでしまいます。
ところが、少なくとも化学工場ではフランジカバーを付けることが、かえってマイナスに働いてしまうことがあります。
設置する前には相当考えましょう。
フランジカバーを設置する理由
フランジカバーを付ける場合の理由を、まずは整理しましょう。
「あえて」付ける、という方が個人的にはしっくり来ます。
ガス漏れを早期に発見したい
フランジカバーを付ける場合は、内容物の漏れ(特にガス化したもの)を早期に発見したいという場合です。
内容物が液体でも気体でも構いません。
これが漏れたときに早期に発見するニーズがある場合に、フランジカバーを付けましょう。
樹脂製のフランジカバーにガスが接触すると、大抵の場合は変色します。
透明のカバーを付けていて最初はフランジ面が見えていた箇所でも、時間が経つと見えなくなることでしょう。
この場合に、フランジ側からのガス漏れを疑います。
内容物が液体の場合、漏れたら液体でしょ?
こう思うかも知れませんが、液体がフランジ面から微量に漏れが起きるという初期段階では、ガス化している場合もあります。
液体中のガス化した成分が、ガスケットの微妙な隙間から漏れるというパターンです。
最初はガスだけしか漏れる隙間がなくても、隙間が広がって来たら、液体も漏れるようになります。
ガスケットの漏れというカテゴリーでも、液体が漏れるよりもっと先のガスが漏れるというタイミングで発見しないと、危険な内容物に対して、フランジカバーを付ける理由になります。
一般的な液体だと、ここまで危険なものはないので、フランジカバーを付けることは無いでしょう。
酸やアルカリなどで、漏れたら一瞬で人体や環境に影響がある厳しいもの、という位置づけです。
私の担当プラントだと、塩酸とか硝酸になら、フランジカバーという話が出てきます。
雨水を極端に嫌う
雨水と接触すると、危険な反応が発生する液体に対しては、フランジカバーを付けることが考えられます。
上記のガス漏れを早期に発見したいというニーズと、重なる部分は多いです。
このケースだと、フランジを使わずに溶接で対応する会社もあるでしょう。
溶接の場合は、施工の問題が無いことを確認するための非破壊検査が欠かせませんし、溶接線周りの腐食の進展を定期的に確認しないといけません。
メンテナンスコストが爆上がりします。
フランジカバーへの着色で発見できるなら、その方が良いかもしれません。
そのコスト差を考慮しても、雨水を嫌うという場合には、フランジカバーを付けても良いかもしれませんね。
フランジカバーを設置しない方が良い理由
フランジカバーを付けない方が良い理由を、まとめます。
たいていの場合はこちらの場合になるでしょう。
フランジやボルトナットの寿命を少し伸ばしたい
フランジカバーを付ける狙いとして、フランジやボルトナットの寿命を延ばしたいということがあげられるでしょう。
この目的に対して、フランジカバーは適切に機能しません。
雨水がフランジカバーに入ってきたり、フランジカバー内に溜まった液体により腐食する可能性があるからです。
これらを防ぐためには、フランジカバー内に溜まった液体をどこかに自動排出する仕組みが必要になります。
そこを考えるくらいなら、フランジやボルトナットの材質を上げる方が良い場合は多いです。
切替配管なら材質が何でもあっても都度交換すれば良いですし、フランジやボルトナットを長期間交換しない前提なら材質を上げてもメンテナンスコストが上がるわけではないですからね。
中途半端な対策になってしまいます。
漏れても影響が少ない
漏れても影響が少ないものは、フランジカバーを付けなくていいです。
ここでいう影響は、「人体や環境に一瞬で影響が出る」というレベルです。
漏れたものを見たときには、誰でも明らかにマズイといえるくらいのもの。
得体のしれないものだから何となくマズイ、という程度ならフランジカバーを付けても効果的ではないでしょう。
点検する人が配置されている
フランジの点検を専門に行うような、人がちゃんといる環境だと、フランジカバーを付けても良いと思います。
フランジカバーを付けるということは、定期的な目視点検で早期発見を前提としています。
見る人が居ないのに、フランジカバーを付けても形骸化していくだけでしょう。
人が十分に居ない場合には、フランジカバーを付けずに漏れてきたことを確認してから対応するという方が現実的です。
もちろん人体や環境に影響が出ないような配慮は必要ですけどね。
参考
関連記事
最後に
配管フランジにカバーを付ける場合というのは、そう多くありません。
付けても上手くいかずに、悪化させる場合の方が多いです。
デメリットを考えても、付けた方が良いという場合はそう多くはありません。
メンテナンスをしっかり考えて、フランジカバーは最低限にした方が良いでしょう。
化学プラントの設計・保全・運転などの悩みや疑問・質問などご自由にコメント欄に投稿してください。(コメント欄はこの記事の最下部です。)
*いただいたコメント全て拝見し、真剣に回答させていただきます。