設備は一度導入したら、できるだけ長く使いたいものですよね。
化学プラントのように多量の設備を必要とする業界では、特に重要な考え方です。
扱いを間違えると引火爆発する化学プラントでは、安全に扱える限界と設備の限界の見極めを迫られる局面が多々あります。
仮にこの努力をしても1年2年耐えるという程度。
この努力をしなくても、資金に余裕があるなら、すぐに交換した方が健全です。
しかし、1~2年が重要となる場合が多いのも、また事実。
設備を使い倒すにも、保全の考え方をしっかり持っておかないと、危険な保全となってしまいます。
補修方法の限界
補修方法には限界があります。
その限界がどこかを見極めるのは難しいですが、補修をした後は実績のデータ取りが重要になります。
基本は金属だけ
設備の補修をするときは、基本は金属だけが対象です。
金属材料が腐食や摩耗などで元の機能を維持しなくなった時に、金属材料で補修します。
グラスライニング・フッ素樹脂ライニング・カーボンなどの非金属材料での補修は、特定の場合を除いて元の機能に回復する補修ではないと考えましょう。
同じ場所は溶接を避ける
金属材料の補修でメインの手法は溶接です。
折れたり削れたりした金属部を、溶接で補修します。
ここで知っておきたいことは、同じ場所を繰り返し溶接するのはNGということ。
見た目で明らかに補修が必要な部分は新たな溶接で綺麗に見えても、その周囲の金属部にも溶接の熱が繰り返し伝わっていき劣化します。
そうすると、溶接をした場所のすぐ近くでまた劣化が起こり、そこを溶接していく、という繰り返しになります。
範囲や頻度がどんどん上がってきて、一定の生産期間の間を維持しなくなったところが、限界の1つですね。
- 対象となる金属部を切り取って溶接で繋げる
- 対象となる金属部の周囲に当て板をして塞ぐ
樹脂は劣化する
金属で補修ができないときに、樹脂で補修するという案は一応あります。
グラスライニングやフッ素樹脂ライニングの補修が代表的ですね。
これらの方法は、金属補修のような見た目は完全な補修ですらなく、見た目でも不完全な補修です。
樹脂の劣化が、元の材料の劣化と同じかそれ以上という確率は低く、劣化速度は明らかに早いです。
それでも、生産期間を耐えることができるなら、補修をし続けることは可能でしょう。
金属補修のように、限界の見極めが難しいことは無く、1シリーズ通せば先が見えてきます。
生産計画の調整
補修を最後まで実施するためには、方法だけでなく生産計画への主張が大事です。
ここを疎かにする工場は、生産技術が対応にとても苦労されるでしょう。
いつ稼働が落ちても良い覚悟
補修をすることができなかったり、実績データが少ない中での運転は、いつトラブルが起きてもおかしくないという認識を持ちましょう。
- 補修をしたから次のSDMまで持って当たり前
- そのデータを集めて活用するのが生産技術
- 生産を止めて補修したのに、その後の保証がないのはおかしい
こういう主張は私の周りでも昔は結構ありましたが、最近は本当になくなりました。
劣化していく設備に対して交換するための費用を与えずに、最後まで使い続けていくのであれば、いつ止まってもおかしくないという認識を持つだけでも、現場レベルでは助かります。
壊れてすぐに復帰しないと駄目という環境であれば、その期間を生産を止めても影響の無いような生産計画と在庫管理をすべきでしょう。この辺り、意外と手薄だったりします。
生産能力の低下
補修を続けていくと、生産能力の低下が起きえます。
- 熱交換器の伝熱面積を下げる
- ノズル口径を下げて、流速を落とす
- 貯留容積を落として、取扱量を下げる
ちょっとした能力低下で、延命処置ができたりします。
設備能力に対して生産能力が小さくて、生産能力の低下すら必要がないという場合すらあります。
補修をするときには、これらのリスクの提示をしましょう。
適切に評価できなくてもそれしか方法がないからやってみて、能力をどこまで落とすか見極めながら運転できれば、補修期間を取るよりは生産量を確保できる場合はあります。
そのためにも、補修と稼働は密接な関係があることを理解するのが大事です。
生産能力を落とさずに補修しても欲しいという謎の主張をする人が企画系でたまに見られますが、その意見が強い職場は残念ながらブラックだと思います。
長い補修期間
生産停止をして補修する期間は例えば1カ月など、毎年もしくは定期的に期間を定めて行います。
設備を最後まで使おうとすると、この補修期間が1カ月では足りず、2カ月・3カ月と求められるケースはあります。
この主張が通らない会社もブラック。
ちょっと停止期間を延ばすだけで、設備を延命できるなら、やるべきです。
いつ壊れるか分からないまま運転をし、壊れたときに、慌てて設備を探したり製作したり工事をしたりと大きな投資をするくらいなら、直近の少しの被害を優先すべきです。
- 今問題になっていないから、今と同じ方法を繰り返す
- 問題になれば、その時に考える
- いつ壊れても対応できるように、人の確保はしておくこと
こういう主張だけをする工場はブラックです。
いつ問題が起きても良いように、予備機や予備部品を揃えたり、壊れたときの生産停止期間を見積もったり、何も準備しないときとの対応の比較をしたりしましょう。
何も問題が起きてないときにこそ、主張のチャンス。
それでも落ち着いて議論できない工場は、繰り返しますがブラックです。
参考
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最後に
設備を最後まで使い続けるためには、補修方法の限界と生産計画の調整がとても大事です。
生産技術の現場では補修でも特に応急補修の話題だけが先行しますが、生産計画とどれだけ結びつけるかは大きな課題です。
昔のように、気合で対応できる環境でもなければ、人も居ないので、ブラックな職場とならないためにも主張と議論ができる職場風土が重要だと思います。
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