化学工場の設備が変わらないのは”規制”のせい? 法的規制・社内規制・技術確立・モチベーション

設備が変わらない法律

化学工場の設備の進化を止める各種”規制”を紹介します。

化学工場の設備はこの20年くらい「まともな進歩」はしていません。

進化しているのはDX関係・制御関係の部分に限定されています。

化学工場が進化しにくいのはなぜなのか、解説します。

言論弾圧のイラスト

法律法規

社外の規制といえば、法律法規。

自由な製造を許さないためにも規制は必要です。

ところがこれが行き過ぎていると感じます。

岩盤規制ってこんなところにもあるんですね、と。

化学工場の設備を規制する法律として、消防法高圧ガス保安法等や労働安全衛生法・環境規制法など本当に多くの種類があります。

設備を進化させるために、これらの規制を満足しないといけません。

材質

設備の材質に関する規制が、法律では非常に厳しいです。

化学工場の材質で大事なポイント
  • 燃えない
  • 電気を通す

化学工場で使う材質は基本的にこの2つの要求があります。

燃えない

消防法上は燃えやすいものを極力少なくする要求があります。

消防法では例えば金属以外の材質は基本的に認められていません。

樹脂系は確かに強度が弱く信頼感がありません。

樹脂が規制されるのは危険物配管に対してのみですが、一般配管でもできれば避けた方が賢明のようです。

特に融点が低いPVCやPPは最低限に留めておくべきです。

ところが、これは新たな技術を開発する阻害となっていると感じます。

装置はまだしも配管やバルブ類はいろいろな材質をトライできる環境になって欲しいですね。

バルブ類は当然ながら地道に消防法の適合を目指して開発されています。

とはいえバルブメーカー目線では、普通は汎用用途の開発を先に進めるので消防法関係は遅れがちです。

シートやカーテンなどは不燃性であることが求められますが、消防法の認定を得られたものは意外と少ないです。

特に需要の高い透明のシートはかなり限定的ですね。

電気を通す

化学物質は危険物第四類が多く、静電気着火を嫌がります。

金属を好み樹脂を嫌がるのは、燃えやすさの面だけなく導電性の面からも都合が良いですね。

そのため、可動式のフレキシブルチューブなど配管部品では結構な制約を受けます。

導電性に関する規制は社内の基準で明確に定めている会社も多いでしょう。

防爆

防爆は化学工場の進化を止める大きな要因です。

この2つが防爆の規制を厳しく受けます。

電動機は高効率モーターなどが定番の例。

高効率モーターは非防爆機器から開発されていき、防爆機器は後回しになっていますよね。

新たな技術開発をするときに防爆規制があるがゆえに後回しにされていきます。

計測機器としては温度・圧力・液面・流量などのプロセス計器以外のものが挙げられます。

プロセス計器は防爆対応も進んでいてある程度の選択肢がありますが、その他の汎用的な計器を化学工場の計測用に使うにはハードルが高いです。

例えば、カメラなどの画像関係、振動・騒音などのメンテ関係は弱い。

カメラは防爆対応の物がようやく販売されてきて、DXの目玉となっています。

振動・騒音はまだまだこれからですね。

防爆規制があるがゆえに、これらの設備進化は遅いです。

世間一般に技術革新が進んでいる分野だけに、化学工場だけが遅れを取るような構図になっていると生き残りの問題になりそうです。

社内の各種”規制”

社外の規制に輪をかけて厳しく規制をするのが、社内規制。

法律法規よりも厳しいレベルで自主管理していると言えます。

しかし、そのためには過剰なコストが掛かっているのも事実。

物性・プロセスの安全性

物性の安全性プロセスの安全性は化学工場では必須の検討事項です。

新たな生産品目を導入する場合は、絶対に考えないといけません。

万が一でも安全性が担保できない場合は、大事故に繋がりかねません。

安全性を確認するために、何年も何回もの検討会を重ねていきます。

非常に膨大なチェック項目をパスしたものだけが生産を許可されます。

例えば、SDSを見てみるといいでしょう。

膨大なチェック項目が書いてありますね。

全部を正しく把握できている人なんてほとんどいないでしょう。

仮に全部を守れたとしても、事故が起きることがありますからね。

化学って怖いです。

だからこそ、新しい製品を開発する速度がどんどんと遅くなっているのが現状。

化学の可能性は無限大って非現実的な話です。

現場作業の安全性

現場作業の安全性も規制の1つです。

実際の現場作業の安全性を確保するために、過剰なコストを掛けていく方向になります。

新たな設備を導入しようとすると、何度もトライアルをさせられます。

例えばサンプリング装置とか仕込・充填作業などのハンドリング関係です。

コストだけでなく時間も掛かります。

それなら今までと同じ設備で良いや、って思うことも。

工事の安全性

工事の安全性も規制の1つです。

現場作業と同じく工事も安全性を確保しようとすると、コストが掛かります。

例えば、ボルトを締めるインパクトドライバーを規制して手締めをする風潮が化学工場では強いです。

手締めの方が時間が掛かり、工数やコストに響きます。

インパクトドライバーを使うと、ガラスライニング配管などで破損を起こすことがあります。

この辺のバランスが難しく工事会社の監督がコントロールすることはできないので、一律で手締めという規制が入るのが化学工場あるあるです。

思想としては分かりやすいのですが、厳しすぎですよね。

最近では、この規制もかなり緩くなってきました。

そうしないと、工事作業員が集まらないからですね。

社内規制を強くした場合、外部の環境変化で強引に規制を変えていくという受動的な流れになります。

設備メーカーが開発した品を国に認定をもらうことと同じ構造が、そこにはあります。

技術が確立されている

仮に規制がなかったとしても、化学工場の設備は進化しにくいです。

というのも技術が確立されきっているから。

何かの機能を上げると、何かの機能を失うことになります。

トレードオフの関係が強く制約がとても大きいです。

1990年代にはほぼ確立されていたでしょう。

化学業界自体は1960年ごろに急速に拡大していっているので、技術確立に30年。

化学自体の技術進歩を含めても100年くらいの話。

それくらいで頭打ちするということですね。

2022年現在で技術革新が進んでいる分野も、漏れなく同じ運命をたどるでしょう。

化学よりも早い時間で頭打ち思想ですね。

社員のモチベーション

仮に規制がなかったとして、技術革新の余地があったとしても、化学工場進化が進むでしょうか?

私はNOだと思います。

というのも化学工場の社員にモチベーションが無いから。

3K作業だったり、コスト意識や時間意識を強く求められ、習得すべき知識は増える一方なのに、人がす少なく、厳しい管理など要求事項は強くなっていきます。

この辺りの環境が良くなる方向には働かないでしょう。

何かを犠牲にしないとやっていけません。

設備の技術のトレードオフと同じ話。

化学工場の社員を10年もしていればこの事実に気が付きます。

そしてモチベーションが下がっていきます。

それでも工場に残り続けるかどうか、スキルを持っているかどうかと含めて大事なことでしょう。

最後に

化学工場で設備の進化を止める各種規制を紹介しました。

材質・防爆の規制と社内の安全規制

万が一の問題も許容できない環境だからこそ、新たな開発が進みにくい分野が化学工場です。

かなり注意しないと、思考が凝り固まってしまいがちですね。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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