業務の”引継”について機電系エンジニアが行っている実態を紹介します。
業務の引継はどこの会社でも問題になりやすいですね。
化学プラントの機械エンジニアは引継ぎが極めて下手だと思っています。
少なくとも私が働く会社で、スムーズに引継ぎをしている人はゼロ。
引継をお混った後の数カ月は悲惨な状態です。
解決するコツは言語化と相手への思いやりですが・・・。
会社や組織といった広い視点から見たときの自身の立ち位置で行動する人は本当に少ないです。自分が抱えている仕事を、早く誰かに渡して解放されたいという視点です。これは仕事を始めて自分の能力成長・裁量範囲・行動パターンと関連しています。簡単に言うと、機電系エンジニアは成長速度が遅いので、その間の引継は自分視点が多いということで防ぐのは難しいです。
“引継”の実態
機電系エンジニアが行う引継の実態はざっくり言うとこんな感じです。

引継しまーす。

お願いします。

A案件は工事資料発行して、後は資材発注だけです。
B案件は設計書まだ書いていません。
C案件は今週末工事完成です。
この内容は引継資料に書いています。
以上です。

えっ。ちょ。
案件を並べているだけ
化学プラントの機械エンジニアの引継は「工事案件」をリスト化しただけの物がほとんどです。
ひどいものではターゲットである工事時期すら書かずに、案件名だけという場合もあります。
予算見積→詳細設計→機器発注→工事設計→現地工事という仕事の流れのどのフェーズにあるかなんてほとんどの場合は書きません。
これとエンジニアリング資料としての大量の紙ファイルをドサッと渡されて終わり。
理解できるはずがありません。
背景の説明がない
機械エンジニアの引継の説明には背景がありません。
- プロセス条件
- 機器の選定思想
- その工場の運転思想・設計思想
例えば引継では「熱交換器10m2を更新する仕事」なんて表現しますが、実際には
「○○製品の△△工程の常圧蒸留のベントコンデンサー10m2を更新する仕事」
なんていうプロセス条件が必要です。
プロセス条件を引継で説明しないのは単純です。
機電系エンジニアがプロセス条件を知らないからです。
引継ぎまでに行った思想を説明しない
機電系エンジニアは引継ぎまでに自身が行った業務の思想を説明しません。
「ベントコンデンサーの機器発注まで終わった」
こんな表現しかしません。
そこまでに色々なやり取りがあるはずで、思想や想いがあるはずです。
それを意図的に説明しないエンジニアばかり。
「ベントコンデンサーは既設と同じ仕様で発注しているが、見積先からの回答が遅かった。注意して図面や納期の管理をしてほしい」
こんな説明は可能なはずなのに、機械エンジニアは誰もしようとしません。
業務に不誠実と言われるレベルです。
“引継”不足が起こす結末
こんな悲惨な引継が常態化しているエンジニアリング。
機械エンジニアの引継不足が起こす結末を紹介しましょう。
情報整理に時間が掛かる
引継で情報が不十分な状態のため仕事がスタートできません。
そこで行うことは、周囲の人に聞くこと。
その情報整理に時間が掛かります。
周りの人も時間を取られて、迷惑ですよね。
引継する人が雑にすることで、大勢に人の時間を奪います。
業務全体を見た場合、引継のたびに大きく足踏みをしてしまいます。
間違った設計をしてしまう
引継が不十分だと、間違った設計をしてしまう可能性が高いです。
「○○法でここは△△mの距離を取らないといけないのに、していなかった」
これは本当にアウトの例ですが、それに近いことは非常に多いです。
引継不足が会社全体に大きな損失を与えます。
“引継”を雑にしてしまう背景
さてこんな雑な引継ですがなぜ行われるのでしょうか?
責任を取りたくない
引継をする人の思考として責任回避が頭の中に強くあります。
引継は極端に言うと責任の押し付けです。



- 引継をした人は責任から解放され、引継を受けた人が一方的に責任を負う。
- 引継を受けた人が失敗したら基本的にはその人のせい。ただし、若干の弁明ができる。
こういう発想で引継をしています。
引継をする2者の間で共通認識となっているでしょう。
でもこれで会社としては得なんてありませんね。
時間がない
引継が雑になる背景として、引継をする人の時間の無さがあります。
異動も含めて引継に与えられる時間は1~2週間が一般的。
この段階で業務の整理をして、次の人に渡そうとするとどうしても限界があります。
異動直近まで仕事をしている人が多いですが、振り回された仕事をしている証拠。
時間が無いから雑な引継をして、後はよろしく!と逃げる格好になります。
言語化能力がない
引継が雑になる理由は、引継をする人の言語化能力が低いからです。
機電系エンジニアの課題として度重なって登場する言語化。
エンジニアの技術的能力と言ってもいいでしょう。
言語化能力が低い引継では工程表に現在の状況を書いてそれを読み上げるだけというケースが多々あります。
この記事の最初に取り上げた会話もまさにこれ。
引継を儀式だと思っている
引継を単なる儀式だと思っていると、引継は雑になります。
一度に言われても良く分からないだろうから、資料をゆっくり見てください。
こんな感じで引継をさっさと終わらせようとします。
- 引継をする人は逃げたいオーラ全開。
- 引継を受ける人は一度では理解できないからと諦めモード。
時間的・能力的な問題で引継資料を予め作っておいて引継会前に予習することが難しいから、引継自体が儀式になってしまいます。
どんなに適当な引継でも、引継完了後にサインをして証拠つくりをすれば終わり。
まさに儀式です。

分からなければ聞けばいい
引継会では理解できないから、分からないことは都度聞けばいい。
この意識はある意味で正しいです。
異動があってもお互いに連絡が取れる環境にあればの話ですが。
引継で碌な情報交換ができないから、発生した問題に対処療法的に処置をしないといけません。
常時行き当たりばったりな仕事をしている人ならこれでもいいでしょうが、少しでも計画的に処理しようとしている人からしたらとんでもなく迷惑な話です。
最後に
化学プラントの機電系エンジニアの引継の実態を紹介しました。
案件を読み上げるだけ、背景なし、思想なしが基本です。
引継を受ける人は最初の1~2か月はとても苦労してキャッチアップしています。
引継の時間の無さ・言語化能力の低さ・いつでも聞けばと良いという甘えが背景にあります。
この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。
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