【総括伝熱係数】バッチ系化学工場のU値の実測方法

配管化学工学

NEONEEETです。

U値って設計の時しか使わないでしょ。

せめて試製造くらいでは確認したいですけどね・・・。

この記事では、バッチ系化学工場のU値の実測方法を解説します。

バッチ系化学工場でもU値は知りたい

伝熱計算で必ず登場するU値。総括伝熱係数とも言いますよね。

このU値の計算は設備設計時に当然のように使用し、運転においても地味に使用します。

「地味に」というのは、運転においてはU値の計算をわざわざ行うほどの余裕があまりないので、忘れ去られがちだからです。

実は現場検証時にも必須の考え方ですが、現場で化学工学的な検証をする余裕がない環境がどんどん進展していっていて、U値の計算が登場する場面が少なくなっています。

そんな計算よりも、現場で反応条件を確立して収率を上げる方に注力しがちです。

U値(総括伝熱係数)の定義

U値(総括伝熱係数)の定義を念のため紹介します。

$$ Q=UAΔt $$

これです。

この式は(熱量)=(U値)×(断面積)×(温度差)という物理的な関係を示しています。

熱の伝わる方式として3種類あって、伝導伝熱・対流伝熱・ふく射伝熱のうちでも

化学工場では伝導伝熱・対流伝熱が支配的です。

熱の伝わりを議論する系において、伝導伝熱と対流伝熱の部分を合成して、1つの系としてみなすときの伝熱係数を、総括伝熱係数と表現します。

物理でよく登場する「相当○○」と同じ発想です。

熱通過率と同じ定義なので、同じ意味合いで使用します。

バッチ系化学工場のU値

バッチ系化学工場のU値計算に使用するフローを紹介します。

以下の例が典型的。

U値フロー

反応器のジャケットに蒸気を入れて、プロセス液を蒸発させ、

コンデンサーに冷却水を入れてプロセスガスを凝縮させる。

こんな感じです。

必要な計器として、以下は最低限必要です。

  • 反応器の蒸気配管に流量計
  • 熱交換器の入口出口に温度計
  • 熱交換器の出口に流量計

反応器内には当然ながら温度計が必要ですが、U値の実際の計算では直接は使用しません。

反応器内の温度と熱交換器入口の温度差が無いということを確認する程度ですね。

連続プラントのように塔底温度・塔頂温度のような考え方とは少し違います。

以降は蒸発サイドと凝縮サイドに分けて考えます。

蒸発サイド

蒸発サイドで最初にチェックするのは蒸気流量。

$$ Q_1=m_1Δh $$

$$ Q_1=U_1A_1Δt $$

この2つの関係式を調べます。

上の式は(熱量)=(蒸気流量)×(蒸発潜熱)

下の式は(熱量)=(総括伝熱係数)×(伝熱面積)×(温度差)

反応器の設計でU値の計算をする場合、下の式の(総括伝熱係数)×(伝熱面積)×(温度差)を考えることになります。

U値の計算に必要な伝導伝熱の熱伝導率・対流伝熱の熱伝達率の計算を

装置モデルに適合した近似式を使って緻密に計算します。

プロセス液の液量が分かれば伝熱面積が分かり、温度が分かれば自動的に温度差が分かります。

これはその装置で最大限伝えることができる伝熱量です。

実際の運転では色々な条件によってここまで伝熱量はあがりません。

  • 蒸気配管が小さく
  • 必要な蒸気供給量が小さい
  • 撹拌回転数が少ない

例えば蒸気流量400kg/h、蒸発潜熱500kcal/kgで、総括伝熱係数100kcal/kg・h・K、伝熱面積40m2、温度差70℃の例を考えましょう。

割と一般的なケースです。

設備設計時の計算としては

$$ Q_1=m_1Δh =400*500=200,000$$

$$ Q_1=U_1A_1Δt =100*40*70=280,000$$

という計算結果になります。

実際の運転条件を考える場合は、\(Q_1=200,000\)が決まっているので、

$$ U_1~\frac{Q_1}{A_1Δt}=\frac{200,000}{40*70}=71$$

というように計算をします。

これを横軸に時間、縦軸に温度のデータから、U値の時系列データをとって平均値を求める~というような解析をしていきます。

^^時々刻々運転条件が変わるバッチ反応ならではの考え方ですね^^

凝縮サイド

凝縮サイドも同じような計算をします。

$$ Q_3=m_3Δh $$

$$ Q_2=U_2A_2Δt $$

この計算を行うには、いくつかの前提条件があります。

  • コンデンサーでほぼ全てのガスが凝縮していて、出口は蒸気圧分のガスしかない
  • 凝縮した液体の冷却はほぼ無視
  • 不凝縮ガスとして窒素を多量に含む

流量のチェック

上の式は運転時のコンデンサーでの凝縮熱量を示しています。

(熱量)=(プロセスガスの質量)×(プロセスガスの蒸発潜熱)

です。例えば100kcal/kgのプロセスガスで、蒸発サイドで200,000kcal/hの熱量が伝わっている場合、

$$m_3=\frac{Q_3}{Δh}=\frac{200,000}{100}=2,000$$

という流量が、流量計で指示されているかどうかをチェックします。

流量計の指示値が高すぎる場合は流量計の故障を疑い、

流量計の指示値が小さすぎる場合は熱交換器のトラブルを疑います。

U値の計算は難しい

U値の計算は実は結構難しいです。

  • 熱交出口のガスと液の温度差がある
  • 凝縮後の冷却に関するU値の計算モデルが怪しい
  • 冷却水の温度が管理しにくい

このため、設計段階のU値の計算と運転段階でのU値の計算を比較することはあまり意味がありません。

労力に見合っていません。

トラブルが起こっておかしい!という場合に限定されるでしょう。

普通は、以下をチェックするくらいで終わりです。

  • 熱交換器出口ガス温度が、冷却液より若干高い
  • 熱交換器出口駅温度が、出口ガス温度より低い

熱交換器の能力設計上は、反応器の\(Q_1\)よりも大きいことを確認すれば大丈夫です。

例えば、蒸発サイド側で反応器は280,000kcal/hまで熱を伝える能力があることが分かっています。

この場合に熱交換器のU値を計算して、

総括伝熱係数200kcal/kg・h・K、伝熱面積20m2、温度差90℃

という条件でコンデンサーを運転させると

$$ Q_3=U_3A_3Δt =200*20*90=360,000$$

となり、\(Q_3\)の方が高いとなれば安心という考え方です。

熱交換器の方が反応装置よりもU値が高いのが普通で、温度差も高く取れるので、伝熱面積は多少低くても何とかなります。

冷却水の温度管理も難しい

コンデンサーのU値の計算が難しいことの理由の1つに、冷却水の温度管理の難しさを挙げています。

これは以下のフローを考えると分かりやすいでしょう。

冷却水系統

冷却水は冷凍機や冷水塔で集中制御をします。

個々の熱交換器の入口温度は冷凍機や冷水塔の運転条件で決まります。

バッチ系化学工場の場合は、「どの」熱交換器に「いつ」熱負荷が掛かるかが一定ではありません。

時々刻々変動します。

熱交換器の入口温度が時々刻々変われば出口温度も時々刻々変わります。

熱交換器の数も多いので、1つ1つに対して計器を付けるわけにもいきません。

とはいえ、冷凍機や冷水塔が適切に動いていれば、温度の変動範囲は5℃~10℃くらいで収まりますので、

熱交換器の能力に影響がでる範囲ではありません。

熱交換器入口出口の温度をDCSに取り込んで管理しても、あまり活用されないのはこの辺にも一因があります。

費用対効果が悪いといえばそれまで^^

最後に

バッチ系化学工場のU値の実測方法を解説しました。

反応器で蒸発→コンデンサーで凝縮という典型モデルを取り上がて、

蒸発サイドと凝縮サイドで考えるべきことをまとめました。

熱交換器の能力チェックにUを使うのは現実的ではありませんね。

この記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。

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